昔は敷布団、掛布団ともに綿わたの重たい布団だった。
数年毎に側生地を丁寧に剥がし、洗濯(洗い張り)し、中わたは打ち直して仕立て直しをする・・・ご自分で仕立てをされた方も随分多かったようだ。それだけ布団は生活に密着していたんだね。
ちょうど40年くらい前頃から羽毛や羊毛が寝具の素材として使われるようになったが、それはただ単に物珍しい新素材だったからではない。その頃は、オレは名古屋の寝具問屋で修行をしていたので、「ヨーロッパ諸国では皆羽毛布団を使ってます」とか「羽毛は一生ものだから」などと説明しながら販売していたわ。今考えると大嘘ですね^^;;・・・でも、その当時は羽毛や羊毛に対しての情報がなかったので、売り手も知らなかったということなんだよね。
高度成長期が終わり、女性特に主婦がどんどん仕事をされるようになってきたのがこの時期・・・晴れた日に布団を干す事が出来なくなったということ。
綿わたは植物性繊維なので、吸湿吸水性はあるが、発散は日光に頼る以外ない。だから、毎日でも晴れの日は布団を日干ししないとどんどんへたってきて保温力も落ち、わた自体も傷んでくる。
そこで、吸湿吸水性があり、吸収した湿気を自ら発散し、適度に乾燥させることができる動物生繊維はもってこいの素材だったわけだ。
オレはビジターのお客様の布団の買い替えのヒアリングの時に必ず最初に仕事をされているかどうか、日中の在宅時間など、布団の日常のお手入れが出来るかどうか、干す場所がどのくらいあるのかないのかをお聞きする事にしている。殆どの方は仕事をされていて、日中在宅されていない方・・・今はそれが当たり前の生活サイクルとなっているから、羽毛や羊毛の動物性繊維の布団以外ありえないね。
逆に専業主婦の方は、家事を簡便にするなら羽毛羊毛にされればいいし、昔ながらの布団がよければ綿わたでも問題ない・・・選択幅が圧倒的にあるということだ。
ほぼ100%の方がオレの所では羽毛・羊毛にされる・・・布団干しなんて、余計な時間と手間を使いたくないからね。
布団は、敷でも掛でも、体質や住環境だけでなく、日常の手間や収納スペースも考慮して素材を選ばないと毎晩快適にお休みいただく事が出来ない。ご自分の生活様式や生活サイクルに無理がない布団の素材を選びはまず買い替えの場合の第一歩ということだね。