ヒトはなぜ8時間眠っていたのか。

睡眠についての疑問は3つに集約されると思う。1:なぜ眠るのか(目的)・2:どのくらい眠ればいいのか(必要量)・3:どんな睡眠がいいのか(睡眠の質)
とりわけ2:の「どれだけ眠ればいいのか」は数値的に明確でなければ納得いかないよな。

なぜヒトは大昔から8時間前後眠っていたのか・・・それは生きていくのに必要だったからに違いないとこの世界に入った時から漠然とだが思っていた。でも睡眠の専門家や研究所でそれを明確に言っている人は誰一人いなかったからずっとモヤモヤしていたわ。それがスッキリしたのは2019年に岐阜県養老郡で開業されている医師:船戸崇史先生の「癌について」のセミナーを拝聴し完全に腑に落ちた…納得まで40年掛かった。船戸先生はもともと外科医だったがご自身が膵臓がんになられてメスを置き、生活習慣改善や温熱療法など複数の治療を併用する事で現在癌治療に当たっておられる方。著書「がんが消えていく生き方」はベストセラーとなっている。

不良細胞を自爆させるために8時間が必要だった

人は60兆個の細胞でできている。その細胞は1日0.5%の割合で細胞分裂によって新しい細胞に変わる。
だから200日ですべて細胞が入れ替わり、全く新しい自分になっているはずだが、100%細胞が入れ替わっても200日前の自分と何ら変わらない状態でいられるのは細胞分裂の際にDNAのデーターがコピーされるからだ。
しかし例外なく1/8000万の確率でDNAデータのコピーミスが起る。このコピーミスされた細胞が不良細胞となって活発になるとガン細胞になるということだ。

元々細胞には2つの「死」のメカニズムが備わっている。一つは「寿命死(アポビオーシス)」、もう一つは「自爆死(アポトーシス)」。「寿命死」は何度か細胞分裂を繰り返し、これ以上分裂しないで新しい細胞に入れ替わるメカニズム。「自爆死」は元々備わっている起爆装置を作動して自滅するメカニズム。不良細胞を癌化させないためには自己治癒力によって自爆させないといけないわけだ。

自己治癒力を発揮するのは白血球の中の「顆粒球」「リンパ球」。「自爆死」は白血球の中のリンパ球がP53遺伝子を使って不良細胞を自爆させる。このリンパ球は副交換神経に支配されているため睡眠時間が不十分だとそれが効果的に発揮できないのだ。リンパ球が不良細胞を発見し自爆させるためには7~8時間の睡眠時間が必要だそうだ。
つまり日中の活動時間と同等の時間が必要であるということ。ヒトが昔から1日の1/3を睡眠に当てていたのは生きていくために必要な本能だったんだよね・・・大いに納得!!

不良細胞が活発化すると癌細胞になる…癌は元々自分の体の一部の細胞だということだ。今や2人に1人が癌で亡くなる時代だが、正しくは2人に2人が必ず癌になり、そのうち1人が亡くなるということ。だから、がんになってからの治療より癌にならないような自己治癒力を持つべきだということになる。
船戸先生曰く、癌患者なら8時間癌の予防でも7時間の睡眠時間は必要。そしてこの睡眠時間はメジャースリープ(まとまって眠る)であることが必須ということ。

もう一つの「顆粒球」は、外部からの感染または侵入細菌や雑菌を攻撃するのだが、顆粒球は交感神経に支配されているので起きている時に活発に働く。もし細菌や雑菌の侵入の少ない深夜に起きていると顆粒球が逆に不良細胞を煽って活発化させするので、睡眠時間が短いとダブルパンチになってヤバい。

大昔からヒトが一日の1/3を睡眠にあてていたの疲労回復や記憶の整理・定着もさることながら、最大の目的はリンパ球に自己治癒力を発揮させ不良細胞を自滅させるためだったのだ。つまり健康に生きていくために必要な時間だったということ。人間も動物だから至極当然だが、一応他の動物と比べて考えてみた。

動物は自分に必要な睡眠時間を持っている

動物のすべての生理的必要事項は進化の過程でトライアンドエラーを繰り返す中ですべて出来上がったものだ。だからそれぞれの動物の睡眠時間も同様に確立したと考えるのが自然。
哺乳類でも食性の違いで草食動物、雑食動物、肉食動物で置かれている環境、体の大きさ、動きの速さなどで平均睡眠時間は違う。

●草食動物:平均約7-8時間(キリン2~4時間・ゾウ5時間・リス15時間・コアラ18~22時間など)
●雑食動物:平均約12時間(人間7~8時間・ネズミ13時間など)
●肉食動物:平均約13時間(猫12時間・犬13~14時間・ライオン14時間・トラ16時間など)

哺乳類の中でもヒトのように1日に1回しか寝ない動物は少なく、雑食でありながら8時間しか寝ない動物は珍しい。野生での命の危険度や置かれている環境がヒトはかなり異なるからそうなんだろう。
体重が大きい哺乳類は、体重に対する体表面積が小さく、体温は放散されにくく、代謝量が大きいので酸化ストレスを受けやすくなり、脳への酸化ストレスによるダメージを修復するために長い時間眠り必要があるようだが、体が大きいと捕食される心配も少ないから脳のダメージを修復するのに必要な睡眠時間以上に睡眠を取っていると考えられていることもあるので哺乳類は基本的に人間と同じ7〜8時間が必要な睡眠時間だとオレは考えている。

睡眠時間の確保は容易にできる

「寝る間も惜しんで働く」…これは日本では善な言葉で使われる。眠ることは悪・・・サボっているとか怠けているとかやる気がないとか・・・そういう文化土壌が日本にある。韓国も同じ。それ以外の国は眠ないことは悪らしい。
ちなみに国別の平均睡眠時間で日本と韓国がいつも最下位とブービーを争っているのが常だが、2国だけそういう文化土壌だから当たり前だろうね。元々気温も日射時間も文化も違う国を一並べで数字だけ比べるのは無意味でバカらしいが、「日本人の睡眠時間が世界的に少ない!」と専門家が世間を煽るには丁度いいデータだわ笑

ネット社会になり、情報量も格段に増えれば収集・処理時間も格段に必要になる。”やりたいこと”が増えるということだ…仕事も遊びも。だから少しでも睡眠を削ってやりたいことを増やしたいと考えがちなのは理解できる。
でも、ヒトも動物、身体が「資本」だね。健康に活動し生きていくために睡眠があるわけだから7〜8時間の必要睡眠時間は確保だ。一か八かの生き方も嫌いじゃないけど。

今7時間以下の睡眠時間で、もしそれを増やしたいと思うのならそれは簡単にできる・・・その日やりたいことを一つ二つ明日に回せばいいだけ!!のことだ。

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