ここ数年、ベッドマットやマットレス、敷布団などの善し悪しは「体圧分散」データを示されることがホントに多い。どのカタログを見ても必ず色分けされた寝姿勢の画像が出てる。
しかし、マットを選ぶ際、体圧分散と寝心地はあんまり関係ない。
また、カラダは毎日変わり、時間毎に寝姿勢の体圧も変わることを忘れちゃは行けない。
ヒトは直立二足歩行をすることで、背骨がS字にカーブしている。
これは約4トンの大気圧が体に掛かるためだが、仰向けに寝ることで首のくびれ以外は限りなく一直線になるということが広島大学の研究でも分かっている・・・寝ると時間の経過でくびれがなくなるということだね。
だから、一時点の体圧分散を計った所で、自分にとっても長時間体を支えてもらうベッドマットの善し悪しなど判断できる訳がない。
ましてや、身長も体重も骨格も脂肪や筋肉の付き方も人それぞれなのに、1タイプの人の一枚の画像はまったく意味がないと思う。
商品開発の過程では、マットの物性を見る意味で体圧分散試験を行なうが、寝てすぐから数時間単位で4〜5回の測定をやる・・・時間の経過で体圧の掛かり方はかなり変わってくるから、素材の安定的な弾力性をチョックするために行なうわけだ。
おそらく、その中で一番分散した画像をカタログや店頭に出すんだろうね。
画像的にはサイエンスっぽくて綺麗だけど、あんまり意味はないと思う。
枕の形状や高さをちょっと変えただけで一気に画像の色分散もは変化するから、あまり実際に使用する指針にはならないね。
本来、体圧分散のデータが必要な方は要介護の方だけ。
ご自分で寝返りが打てないからどの部分に体圧が強く掛かるかを計って、その部分にクッションなどの補強アイテムを入れるためだ。
床ずれや寝ダコといわれる、いわゆる褥瘡(じょくそう)の予防だね。
また、そう言う方のための介護マットを開発するために必要なデータと言える。
ヒトが寝たときの体重の分散は「頭部8%」「胸部33%」「臀部44%」「脚部15%」。
だから、体が沈み込まないマットを選ぶときは、もっとも寝姿勢で荷重が掛かる臀部の落ち込みを計測すればいい。
臀部と言っても仙骨のあたりを計測して適度な数値の範囲なら、まずはOKということだ。
圧が少ないと体は逆反りぎみということだし、圧が多ければくの字に沈み込み気味ということになるね。
しかし、こういった数値も一つの目安に過ぎないのも頭にいれておかないとね。
マットは、体を横たえた時の体重の衝撃を吸収する弾力性と、押し返す反発力の両方が必要だ。
前コゴミの日本人の体型に必要な反発力を持ったマットは、体圧分散を計測すると体部分が真っ赤になるものも少なくない・・・実は、こういうマットが翌朝までしっかり寝姿勢を保ってくれるマットである事が多いんだよね。
販売手法や売場対策として、いろいろな客観データで説得しようとしている商品が多いんだけど、仰向けで立て膝して体を左右に寝返らせて、その動きがスムーズかどうかを動物的な感覚で感じてみて選ぶ事が最も必要だと思う。
自分に合ったものに寝た時、その安心感で目尻と口角が下がって優しい顔の表情になる・・・これは動物としてあたり前の反応。
オレがフィッティングでマットや敷をナビゲートする時は、その微妙な表情を見逃さないようにしているよ。