羊の毛は、放牧している間に牧草地を歩き回り、毛足が長いために、植物の種や樹皮、枯れ草が沢山絡みつく・・・あたりまえだけど^^;;
この不純物は、輸出までの作業工程では、完全に取り除くことができない。
原毛として輸入され、日本国内で羊毛わたに加工する場合、この植物の不純物を除去するために「化炭処理」という行程を行うんだよね。(価格によってその度合いが異なるが・・・)
羊毛を刈り取ってから、輸出前に繊維の向きをそろえる”カーディング”という工程で、植物の種などの不純物はかなり取り除かれるが、まだまだ見た目はゴミだらけって感じかな。
そこで、輸入後に、希硫酸に浸した後、高温で乾燥させ、植物繊維を炭化させ、振動とエアを吹き付けて炭化した植物繊維を振るい落とした後に、アルカリ性溶液に浸して中和させる。
このように、酸とアルカリを使用する化炭処理により、植物性の異物はほとんど取り除かれる。
一般にウール繊維は火に強いから、この”化炭処理”で変化はしない。
だが、ウールを酸やアルカリ、高温にさらすという、相当厳しい工程を通すため、ウール繊維の脂分(ラノリン)は、希硫酸などによって除去されてしまうようだね。
日本では、いくら植物とは言え、種などの不純物が入っていると不良品となるので、日本国内のほとんどのウールは大なり小なり化炭処理を行っている。
【”化炭処理”した一般的な国産羊毛わた】
国内で一般的に使用されているウールわたはまだ不純物は結構混ざっているわな〜。オレが職人手仕立てで作るピローやクッションは、こっちのわたを使う・・・理由は、職人仕立てようの玉わたはこっちのレベルしかかないから(==;;
【”化炭処理”したトップクラスの国産羊毛わた】0ではないが、ほとんど不純物は除去されている。オレがパッドで使っているのはこっちの羊毛わた。
化炭処理をすると、使用される希硫酸によって、ウール繊維の脂分(ラノリン)は、ほぼ完全に除去されてしまうから、ウールの持つ本来の特性は変わってしまうと考えられる。
ウール繊維の脂分(ラノリン)は、ウール繊維の保湿性・弾力性・つやといった特性と関連があるからね。
また、ウール繊維は水に浸したり、機械的な刺激を受けると、繊維がからみあって縮んでフエルト化する。
そこで、こうしたフエルト化が起こらないようするために、繊維がからみあわないよう”防縮加工”をかけるんだわな。
方法としては、繊維の表面を削って滑らかにする方法と、繊維をコーティングして滑らかにする方法があるが、いずれにせよ、ウールの繊維の状態を大幅に変えてしまうので、これもまたウール本来の特性も変わるよね。
特にヨーロッパでは、化炭処理で使用する薬品が大気や海を汚染することも問題視されていて、化炭処理を行わない方が良いとされているから、基本的に海外の羊毛と日本の羊毛は違うということになる。
ただ、ピュアなウールは、ウール本来の特性は持っているが、摩擦や刺激を受けるとフエルト化し、小さく毛玉がになることがあるので、ホコリっぽい感じ。
また、生地との相性や毛質の状態で、生地を突き抜ける(わたが吹く)こともあるね。
昔、輸入物の羊毛パッドを扱っていた時に、そうした問題がでて大変だった経験があるわ。
少々の不純物があっても自然に近いものを良しとするヨーロッパと、できるだけクレームがないようにしようとする日本・・・使い手目線と作り手目線の決定的な違いが国産と海外の「羊毛」の違いということだね。
でも、寝具は衣服と違って”保湿性”・”弾力性”・”つや”といった特性より、調湿発散性・消臭性といった機能で中材に用いるから、オレは日本の羊毛の方が寝具には良いと思おうけど。
やっぱ、植物とはいえ不純物が入っているものは、ウール100%ではないな・・・見た目も汚いし(==;;